南九州税理士会大隅支部長インタビュー

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ラ・サール高校から中央大学を卒業、税理士資格を取得。東京にて起業し、大手企業のマーケティングリサーチやプランニングを経験した後、地元の志布志に戻り、「海江田経営会計事務所」を開業。約20年間、志布志の中小零細企業を税務・会計のみならず、マーケティング、リスク管理等、あらゆる形でサポートし続けて来た税理士・海江田博士先生にお話を聞かせていただいた。

志布志の中小企業の課題

- これまでたくさんの中小企業を見てこられたわけですが、志布志の中小企業の課題を教えて頂けますか?
海江田「まず売上の落ち込み。これがひどいところでは、例えば、売上が1億円あったところが6,000万、5,000万じゃないんですよ、1,000万、2,000万まで落ちている。かつて成功した商売が成り立たなくなっているが、特に手を打ってきていない。そういう事業者さんが結構いらっしゃるので、志布志全体の経済は総じてかなり下がっているでしょうね。これが一番の問題。次に何をやるかが見いだせていないという課題。私が志布志に戻ってきて、何かこれから伸びる業種はないか、ということで取り組んだのが、農業と社会福祉法人。この二つに特化してノウハウを積み、読みは当たりました。」

- その農業分野について、志布志だからこそ持つ可能性は何でしょうか?
海江田「農業分野の発展はこれからだろうと思います。私が農業に目をつけたことは確かですけど、技術的なことに詳しい訳ではないので。ただ、きっかけになったのは、面白い逸話がありまして、ある日、うちの事務所の玄関にふらっと入ってきた方がいらして、『ちょっとあんたのところに頼みたんだけど』と、誰だろうなと思いながらも奥へご案内してお話を伺ったところ、『私は食品の技術者である。以前大手の食品会社に勤めていたが、こっちで会社を作ろうと思う』と仰っていたんですね。どういうことかと尋ねると、『食品の専門家である私から見ると、大隅半島は宝の山なんだ。ここで生産された農産物を一次加工、自分の技術を使って製品にして、それを販売する会社を作りたい』と。ここから先が非常にユニークなんですけど、『ついては、自分のコアのノウハウ以外のことは抱え込みたくない。だから、あんたのところで会計とか総務的なことは全部やってくれないか』と。そういう話、私は初めてだったもので、ちょっと怪しいなと思ったのでが、まずは取引を始めてみました。そうしたら仰る通りだったんです。実際にここでできた農産物は非常に魅力的なものが多くて、その方はゼロから始めて、本当にお一人でやられて、まもなく売上が一億を超える規模です。こういう背景があったものですから、農業はすごいのかなと、その前から農業分野の可能性を考えていたので、これをきっかけに農業に特化してみようと思ってやりました。その結果、一時、農業法人の設立が年に3、4件コンスタントに続いたことがありました。その間に商工業で設立された方はほとんどなかったですね。食品加工は最初のお一人だけではなくて、他にも何人もお見えになりました。うちのクライアントさんで何人かいらして、その方たちが志布志で生産されたものを加工して、中央と繋いで法人を経営されている。こういう形が増えています。食料生産基地としての魅力が大隅半島がダントツに高いのでしょう。加工技術、あるいは流通に繋げる道筋、ここがあまり強くなく、ブランド化、販売促進やPR、要するに生産以外のところは弱いので、そこを何とかすれば地元の活性化に繋がるのかなと。これが私が志布志に帰ってきて考えた作戦の一つでした。これにはきっかけになることと、キーパーソンが何人かいらっしゃって、ヒントを与えて頂いたということなんです。」

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海江田先生の著書「小さな会社のマーケティング活用術」中小零細企業が「今の時代をどう生き残るか?」のノウハウが多く書かれている。

- 著書の中でも、中小企業向けのマーケティングが大切だとおっしゃっていますが、より具体的に教えて頂けますか?
海江田「農業の方は作っておしまい、というところが多いんですね。まず二つの誤解がある。“良いものを作っているからあとは出せば売れる”というのと、“良いものを作っているのにそれに気づいていない”という二つ。自己満足とその真逆の方、どちらにしても消費者の声が届いていない。これが一番の問題。マーケティングとしては、もちろん商品開発、流通、販売促進といったプロセスは一杯あるんですけど、最初の生産のところからその価値に関して誤解があったり、消費者の声を理解していなかったりというのがある。あとは、販売促進や流通に関するところ。マーケティングで何をやったら良いかと言ったら全部ですね。全部のプロセスでやっていかないとダメだろうと。これはご自身ではなかなか分からないと思いますので、外からの刺激がないと動き始めないでしょう。今回、ふじやま学校さんの活動は自治体を動かしている、私はこれはすごく刺激になるんじゃないかなと思います。」

- 農家は良いものをつくって、売るところは売る人にお願いするということではなくて、農家としても売り方を考えなければならないということですか?
海江田「まさにそうですね。一つあるのは契約栽培、大手食品企業と最初からこれだけ買い取るよということで契約してしまうこと。いくつかそういう農家はありますね。ただし、流通は安定供給を気にするじゃないですか。それには個々の農家単独ではやはり難しいので、法人やグループを作り、必ず欠品をしないという約束をして対応する動きが出てきています。」
海江田「農家の方が一番言われるのは、契約栽培は騙されるんじゃないかということ。名の通ったところが相手であれば良いのですが、仲介ぐらいの方もいらっしゃいますから、そうすると痛い目にあった人の話を聞いて腰が引ける場合もあります。そこは試行錯誤でチャレンジして頂きたい。もしかしたら失敗もあるかもしれないけれど、乗り出していかないと今の状況は打開できない。ぜひ挑戦して頂きたいと思っています。」
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「志布志の観光はポテンシャルがすごくある」


- 農業以外にも志布志には商工業、観光業、色々あると思いますが、志布志がまちとしてより発展していくために必要だと思われることを教えてください。
海江田「私は観光はポテンシャルがすごくあると思っています。観光の一番の財産は今あるもの、志布志の場合は何といっても海のロケーション等の自然だと思うんです。また、お客さんを呼んでくるためには、受け入れ体制の整備が必要でしょうね。それには意外にも遊歩道とか案内板とかの地味なものが充実が大切。さらに言えば広告宣伝、志布志はこんな良いところですよというアピール。今は鹿児島市内からのアクセスは昔に比べたらずいぶんよくなっているんですけど、ただ鹿児島市内の人は志布志ってめちゃくちゃ遠い、おそらく意識の中では2時間、3時間かかる場所だと思っているはず。でも実際は高速道路を使うと1時間半くらい。この差はすごい違いじゃないかと。さらに道路が整備されて1時間半がもう少し縮まってくれば志布志ってそんなに遠くないよという風になる、これからその意識付けが大事でしょうね。それと、高速道路を降りてから志布志へスッと行くためには道路の案内表示が分かりやすくないとダメでしょう。分かりやすい看板など、見て分かるもの、そういうことを地道にコツコツやっていくことが大切で、爆発的に一発でポンと集客というのはなかなかありえないので、観光に関しては企画を立てて、地味なところから積み上げていく、そういう取組をしたら良いと思いますね。」

- 商工業面ではいかがですか?
海江田「商工業で何かコアになるものが無いとダメでしょうね。それで言うと大隅半島は食だと思うんで、地産地消でやる、飲食業をロケーションの良いところでくつろいでもらうための仕掛けを工夫するのが良いと思います。志布志は自然のロケーションに恵まれている割りには、飲食を始め、観て楽しめる施設が足りない気がします。これを改善していくと、人の交流が多くなり、他の商売もついてくるだろうと。だから、まずどこをてこ入れするか順番があると思うんですけど、志布志の場合、港があって、旧来の商工業者のまちがあって、その後ろに農業、畜産業と、いくつも産業が地区で分かれているので、地区地区でこっちは後回しかよという議論が多くてなかなかスムーズに前に進まないように私には見えます。『俺は今回一歩譲るからまず先にお前のところが良くなってくれ』というような意識が志布志全体の活性化には凄く大事ではないかと思うんです。」

- 先生ご自身を経営者としてみると多くの人を雇われて運営されている成功例だと思いますが、ご自身での成功を自己分析してお聞かせ頂けますか?
海江田「私は自分の事業を分析したときに、従来型のビジネス、お客様の帳簿、数字をチェックして最終的には決算、税務申告へ持っていく、そのサポート業、代行業でfeeを得る、これは今も続いている一方で、志布志は過疎化、高齢化が進んでいる地域なのでこのままではジリ貧になるなということから、業種としては農業と社会福祉法人を模索しました。他方、税理士に期待されていたことで言えば、高度成長時代あるいは経済が上向いていた時代は最後の節税だったと思うんですよ。税金のことをしっかりやってくれる、法律に則した上で税金を安くやってくれるという期待が大きかったと思うんですが、私が志布志に帰ってきた時にはバブル崩壊後でそれからずっと低成長、時にはマイナス成長で法人の赤字が一番ひどい時には全体の26%くらいが赤字でしたから、もう節税というのは商品にならないというのが良く分かりましたよ。では、サービ内容ではなんだろうというと経営コンサル、経営改善支援に舵を切らないと絶対やっていけないだろうと。とにかくお客さんのご要望を聞いてくる、現場に行くのは各担当者で、私自身も直接お会いした時にはいろんなご要望を聞く。すると、経営に関する資金繰りの相談、売上が上がらないんだけどという話が主になってくる。それに対して、少しずつでも良くするにはこんなことを考えてみてください、こうしてみたらどうですかということを常にやりなさいと事務所の体質を大きく変えました。徐々に職員もそのことを理解してよく話を聞いてくるようになり、これが今評価を受けているのかなと思います。私は急激にクライアントさんが減るんじゃないかと心配したんですけど、そんなに数は減っていない。税務以外の色々なご要望が出てきていますので、それに対してfeeを頂く、ビジネスモデルを若干変えてきたことが良かったのでしょうか。」
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「東京から志布志へ」

- 東京の中央で経営、マーケティングの業界で錚々たる会社をクライアントにやられてきた先生が志布志に戻ってきて、経営に関する意識としては相対的に遅れていたと思うんですが、ゼロから始められた苦労というのはどうだったんでしょうか?
海江田「めちゃくちゃ苦労がありました。せっかく東京でやっていたビジネスなんで活かしたいという想いの一方で、対象となる企業規模も全く異なる環境の中、途中マーケティングのことはもう捨てるしかないか、今のクライアントさんには税務とか会計のところだけでいった方がいいのかな、という迷いが当初何年かありましたけど、3年目くらいからは完全に開き直りましたね。マーケティングが無くてもやってこれたのは今までだったからで、これから先は無くてはやっていけないぞ、絶対にマーケティング的な要素を入れていかないと今の状況は打開できないぞ、自分はマーケティングと税務を融合したこの路線でいくんだと決めました。現時点でやりきったかどうかと言われるとまだまだこれから、紆余曲折、山あり谷あり、でもこれでいくしかないと今でも思っています。」

- 先生もお父様から事業を引き継いで来られたように、志布志でも事業継承、後継者問題があります。この点についてはいかがでしょうか?
海江田「私が父から税理士のあるべき姿というところで言われたのは、父が考えていた税理士像、世間から見た税理士像、旧来のイメージで言うところのノーマルな税理士でした。一方で、私が志布志に帰ってきて、人間的にもタイプが違うこともありますが、業務内容に関して変えなければいけないと考えていた。そのときに物凄い意識のギャップがあり、お互いのぶつかりあいが生じる訳ですよ。これは他の業種も全部一緒だと思います。先代なり、お父様が成功してきたやり方であったとしても相当変えないと今の時代には合ってこないんじゃないかと思うんですけど、その変え方がかなり変えなければいけないので、後継者は迷うんじゃないですかね。こんなにも変えなきゃいけないのかなと思うくらい。ましてや先代にはとても理解できないので、お前何を言っているんだという話であり、ここのぶつかり合いは全く私がやってきた同じようなことをみんなやらなきゃいけない。だって税理士業界はそれほど変わったとは言われていいない訳で、もっと変わらなくちゃいけない業界はたくさんあるはずですが、なかなかやりきれないでしょうね。後継者がかわいそうなのは味方があまりいないということ。先代からはなぜ変えるんだと言われるし、鹿児島は年長者を大事にする風土、文化がありますので、先輩方からは親の言うことを聞かなければダメだよとか、お前はまだ青いんだよと言われて、若い経営者は腐ってしまうという事例がたくさんある。誰かが味方になってやらないといけない。30代40代の経営者がいたとして、70代のお父さんあるいは80近い会長さんとかがいて、私は62ですからそちらの方に年齢的には近いんですけど、意識的には若い経営者のことを応援してあげなければならないと常に一貫して思っています。となると、私自身が若い意識でいなければならないので、そこはなかなか大変なことはあるんですけど。私が今のような話で一種のアジテート、誘導しているんですが、なかなか若い人は反応せず、笛吹けど踊らず、と時々感じることがあります。若い経営者から見ると私が先代の方に年齢が近いんで、そうは言っても先代寄りでしょ、と思われているのかもしれない、そんなことは決して無い、どっち側ということでもなくて、時代に合っていれば良いだけなんです。」

- これまで大切にされてきた、先生の志を教えてください。
海江田「日本には中小零細企業で成り立っている部分は物凄く大きい。大企業が経済的には大きな力を持っていますけど、法人の数は99%が中小零細企業。おそらくここの活力がないと日本自体の活力が損なわれるだろうと。その中小企業を支えるかなりの役割をするのが会計事務所。これは全国津々浦々、税理士登録をしている人が8万人弱。網の目のように全国にネットワークがあって、数字の専門家として存在している。この人たちが中小零細企業を応援してあげるというのがとても力になるはずなので、その中の一人として、中小企業に活力をつけて、発展、成長して頂く、ひいてはそれが地元の活性化に繋がるということが私の目指すべきところです。」
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「何とかしてやり切れ、と言いたいですね。味方もいないことはないぞ、と」

- これだけは次世代に伝えたいことは何でしょうか?
海江田「次世代の方の目標、哲学は彼らが自ら持てばよい。それはそれぞれであり、私がこうしなさいというのは無いです。事業を継いだ後継者の人には自分なりの考えがあると思うんですが、周りから否定されてしまう機会が多いので、自信を無くすこともあるでしょう。でも、間違っちゃいないよと言いたい。あなたが何かを考えたとしたら、どれ一つ間違っていないと思います。次こういう風にやらなくちゃいけない、親父はこういう風にやってきたけど、俺はこう思うんだ、親父からはこの間否定されて何回言っても聞いてくれないから、もう言うのを止めようと思っている、その方向性のことですね。そのこと自体はどんな風に否定されようが絶対に間違っているというものはないと思うんですよ。ただ実行には多くのハードルがあり、それをやり切ることが難しいのですが、それを私は何とかしてやり切れ、と言いたいですね。味方もいないことはないぞという話で、そこを伝えたいなと思って、だから本を書いたり、ラジオで喋ったり、一貫してそれを言っています。次世代の連中が考えることは外れたことは一つも無い、だからやれということですね。」

- 先生がお父様から受け継いだもの、お仕事に限らず生き様でも何でも良いので、一番大切にされている部分を教えてください。
海江田「それは税理士としての矜持ですね。法律を仕事にしていますので、法をきちっと守る、我々の仕事は期限がきちんと設けられているので、期限や時間のことを父は非常に厳しく考えていましたね。」

- 先生にとって志布志の魅力は?
海江田「志布志は色々なものが混在しているまち。志布志の魅力は歴史、海のロケーション、農業、畜産、それら全部だと思うんです。色々な楽しみ方ができるまち。これから我々が努力して志布志の情報を発信して、志布志の楽しみ方を工夫していきましょう。」





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海江田博士(かいえだひろし、税理士/南九州税理士会 大隅支部長/海江田経営会計事務所 代表)
昭和27年生まれ、志布志町出身。中央大学商学部で経営を学ぶ。新宿の公認会計士事務所に2年間勤務した後、大学院へ進み、税理士資格取得。同時にマーケティング・プロモーションの会社を立ち上げ約10年間働く。その後、1994年に鹿児島に戻り、2代目税理士として業務開始。2001年に現在の海江田経営会計事務所を設立し活動中。
著書「小さな会社のマーケティング活用術」「社長の仕事」「かしこい暮らしアドバイス」などの他、MBCテレビ「任せて安心!税理士さん」、おおすみFMネットワークのラジオ番組への出演、鹿児島大学での特別講師等、多方面で活躍している。

海江田先生の事務所

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会社紹介「海江田経営会計事務所」志布志町安楽

東京でのマーケティングリサーチの経験を生かして、経営革新支援

東京で大手企業のクライアントを持ち、マーケティングリサーチをしていた海江田先生。1994年、志布志に帰り、二代目税理士として仕事を始めたが、業界のIT化とマーケティングの遅れに驚いたという。志布志で一度できあがったものを変えていくのがどれほど難しいことか実感する。二代目に比べて、創業の方が遙かにチャレンジングかつシンプルでやり甲斐があると実感。両方経験したのでそれがよく分かるという。事務所の大きなテーマは二代目、三代目経営者の経営革新支援。

志布志の中小零細企業200社を支えている実績

事務所に入ると会計事務所とは思えない洗練されたデザインに驚く。木を基調にした光の入る、明るい室内で、お茶を飲めるカウンターもある。訪れたクライアントが相談しやすい雰囲気。財務や会計のみならず、豊富なコンサルティング経験を生かした経営相談も特色。志布志の中小零細企業200社を支えている実績は他県からのクライアントにも信頼が厚い。

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木を基調にした部屋のデザインは温かい。オフィス内は、たくさんの光が入るように設計されている。

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大勢のスタッフが働いているオフィス

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会社情報

住所

 〒899-7104
 鹿児島県志布志市志布志町安楽2024-2

営業時間・連絡先

定休日 : 土日祝日
営業時間 : 8:30〜17:00
電話 : 099-472-0620
ホームページ : http://www.kaieda.co.jp/

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事務所までのご案内

国道220号を鹿屋方面から志布志駅方面に向かって、「志布志港入口」交差点を左折、そのまま約1kmほど進むと坂の上の左手に「海江田経営会計事務所」の看板が見えます。

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